Tuesday, August 16, 2011

穀物を噛みしめる : ひき割り小麦/Bulgur

ひき割り小麦/Bulgur

 週に1度、我が家の食卓にのぼる「ひき割り小麦のパエリア」(写真)。手持ち料理の少ない夫が週1度の料理(必須)で作るメニューである。なぜか私の辞書に見当たらないのだが、bulghurと綴る。粗目糖によく似た小麦色で(小麦だから当然か)、光に透かすと透明感があり、まるで結晶のように美しい。
 名前だけは料理の本で知ってはいたが、なにしろ日本人。それまで、ひき割り小麦を見たことのなかった私は、興味津々で夫が料理をするのを横から見ていたものだ。玉ねぎをソテーし、適当に切った野菜やひき割り小麦をじっくり炒って、スープストックを入れたらふたをして火が通るのを待つ。調理時間わずか20分ほど。「まあ、パエリアに似た調理法だわね」ということで、「ひき割り小麦のパエリア」命名と相成ったのである。
 なるほどね、パエリアは魚介類、ひき割り小麦のパエリアは野菜を使うが、いっしょに煮込む素材の味を淡白な穀類に移すわけね。
 そのポイントさえ分かれば、こっちのもの。あとは、想像力と独自性、それから失敗を恐れない勇気があれば、いろいろなアレンジのアイデアが湧いてくる。野菜のほかに、あさりを入れてはどうだろう? サフランを入れてはどうだろう? ナッツ類はどうだろう? かくして、今では私の隠し味はスプーン一杯ほどのトマトソースとパセリに落ち着いている。夫の場合はソテーしたマッシュルームとおしょうゆ(ちょっと入れすぎなんだよね)。
 「最近のフードはどれもこれも柔らい」と言われて久しい。パンもパスタも麺類も、噛む必要がないくらいに柔らかくなっていく。穀類でも何でも精製して作るプロセスフードが幅をきかせているからに他ならない。もとより噛み応えのあるものが好きな私は、アルデンテに調理したひき割り小麦を噛みしめるたびに、その奥行きのある味わいに感じ入ってしまう。ゴツゴツした自然の味、やわらかな甘さが口に広がると、「これぞ、大地のフードだわね」と思わずにはいられない。
 ひき割り小麦は、自然食料品店などで手に入る。

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