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Tuesday, August 16, 2011

春野菜を食べよう! :ダンディライオン

ダンディライオン/Dandelion

春になると青い野菜をモリモリ、バリバリ食べたくなる。そして、菜の花、かぶ、、春キャベツ、たけのこといった旬の野菜がかご盛りで並び、ごくごくシンプルに料理しただけで、大地のエネルギーを摂取できた日本の食生活をなつかしく思ったりもするのもこの頃である。


野菜に関していえば、1年を通して季節感がほとんど感じられないここトロントだが、この時期、「春野菜」らしき野菜が出まわっていることにお気づきだろうか。「春キャベツ」とは言えないまでも、いつもより柔らかく水分を含んだキャベツ。あるいは、サッカー部員の足のような頼り甲斐のある、極太で短いアスパラ。以前ご紹介したビーツの葉も厚みを増してくる時期である。

これらの「春野菜」のなかでも、数年前から私のベストワンといえば、ダンディライオン。ダンディライオンとは、そう、タンポポのこと。小学校で飼っていたうさぎのリリーに、タンポポの葉を見つけてきては金網の間に押し込んで、リリーの口に小刻みに消えていく葉っぱをうっとり見ていた私としては、「タンポポの葉を食べるなんて、うさぎみたい!」と思って数年間は敬遠していた。しかし、あるとき、知人宅でダンディライオンのサラダ(アンチョビ・ドレッシング和え)をごちそうになってからというもの、この苦々しくてとっつきにくい野菜が大のお気に入りになった。単なる雑草だと思っていたダンディライオンがハーブの一種であり、健康指向の人たちの間で人気だということも初めて知った。あの青々しい葉っぱを「良薬は口に苦し…」とか何とか言いながら食べていると、自らの健康とウェルビーイングに多大な貢献をしているような気がして、とっても気分がよいのも事実である。

北米では、ダンディライオン・サラダのほか、スープにしたり、黄色の花の部分をフリッターにしたり、軽くソテーにしているらしい。私がもっぱら好きなのは、「菜の花の白和え」ならぬ「ダンディライオンの白和え」。ダンディライオンはたっぷりのお湯で1分ほどゆでて、冷たい水にさらす。炒りたての擦りごまと調味料で味付けし、お豆腐を崩し入れる。それを全部和えるだけ。しかし、あの苦味のおいしさは子どもだったら分からない。フライパンに油をひいて、玉ねぎとガーリックのみじん切りを入れて香りを出し、軽くソテーすれば、万人受けする一品となることだろう。

フルーツのような食感の野菜: ビーツ

これをゆでてマリネしたものをお弁当箱から食べていると、ビーツを知らない人たちはギョッと驚く。


「ちょっと、何を食べているの? 真っ赤なジェリー?」

たしかにね。こんなきれいな赤色の野菜なんて、そう滅多にあるものではないものね。このビーツは、ほら、ロシアの伝統的料理ボルシチやポーランドのグーラッシュを赤く染める、その当の根菜でありまする。ロシアや東欧の料理はビーツがなくてははじまらないとも聞く。ドストエフスキーの小説に出てくるような極貧農民にとっては、固い土地でも育ち、貧しい人に不足しがちな糖分を多く含むビーツは、救世フードであったに違いない。

今はどうか知らないが、私が日本にいたころは、新鮮なビーツは手に入らなかった。缶詰がせいぜいだった。カナダではスーパーはもとより、日保ちがよいビーツはコーナー・ストアでも入手できる。

スーパーといえば、あるときレジ係の人から唐突にも、「あなた、この葉っぱをどうしている?」と、尋ねられたことがある。手には私が買おうとしていたビーツが握られている。「捨てますね」と私が言うと、彼女は向こうにいた夫をチラと見て、「賢い主婦なら、葉っぱは野菜スープやシチューに入れなさい」と私に言った。見ず知らずの人から「賢くない主婦」であると示唆されるだけでもカルチャー・ショックであったが、それまで邪魔者扱いしてきた葉っぱが食べられると知ったのも、それに輪をかけるようなショックであった。

さて、ビーツを茹でるときは、どの料理本にも書かれてあるように丸ごと茹でるのがいい。そうすると、ブリーディング(まるでホラー映画の登場人物のように両手が真っ赤になる状態)が避けられるし、皮もスルスルとむける。マリネ液がよく染み込むよう、ごくごく薄くスライスしたら、オリーブオイルとワインビネガー、オレンジジュース(ストレート、100%のものを使ってね)を混ぜたマリネ液につけこもう。よく洗ったベビースピナッチのうえに、真っ赤なビーツ、クランベリーなどを乗せ、マリネ液をかけてサラダにすると、味と栄養は去ることながら、色合いも見た目も申し分ない。

あの、フルーツを食べているようなビーツの食感は筆舌に尽くしがたい。甘くて柔らかく、すっぱいビネガーと組み合わせると甘さに奥行きが出て、何だかすばらしく特別のものを食べている、特別の人になったような気がするのだ。